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気に入る

日々のこと
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仕事終わり、A氏からの連絡が入っていた。

A氏の母国語は日本語ではない。日本語はかなり流暢だが、たまに気になることがある。

A氏が運営にかかわるジムに体験にきた女の子、Kちゃんの母親からの丁寧なメールに対し、A氏は、「Kちゃんのことすごく気に入りました。」

と書いていた。(実際は、もっと長い文章だけど)


ほとんど間違いのない文章のなかで、なんとなく、その部分だけ違和感があった。その違和感が最初はなんだかわからなかったけれど。

「この文章訂正してください」とA氏は書いてきた。

私は書いた。「娘さんを気に入ったって男性が言うと、親は警戒するので、気をつけてください」

A氏は納得しなかった。Kちゃんはまだ子どもなのに、なんで気にする?となる。
「同じことだよ。親は警戒するよ、いくつの娘であっても。年齢関係ない。気に入ったという表現。」

A氏「可愛くて真面目にやってくれたことですよ」

A氏は次のように自分で書き直した。「Kちゃん真面目にやってくれて可愛くて素敵でした!」

私「それもダメな気がする」

A氏の素のテンションで、面と向かって言われる言葉は、なんだって爽やかで嫌みもいやらしさもいっさいない。だから、メールじゃなかったら良いと思う。だけど、母親のいたって真面目で丁寧なメールに対し、当然、こちらもある程度真面目で丁寧なテンションで書いている。その文章の中に、娘を気に入った、可愛い、素敵、の言葉があっても大丈夫だろうか?私は正直、避けるべきと判断した。

A氏には、私の先入観がヤバいと言われた。言われたとおり、先入観かもしれない、私が気にしすぎかもしれない。だけど、言葉屋or代書屋さながらにときに言葉を教え、ときに言葉を綴ってきた身としては、些細な表現にも不必要かもしれないほど敏感になる。敏感でい続けるにはゆるみも必要だ。できるだけ敏感にならずにつらつら書きなぐってみたいという気持ちもあるし、そういう姿勢で綴ることにしたい。

ともかく。
A氏にはこれが先入観ではないと思うと伝え、形容詞ひとつで、もし微妙に心に引っかかって、顧客が次にくるときにハードルになったらもったいないから、と話した。

そこまでやりとりして、風呂へ。
風呂に浸かりながら、それだけではない違和感について、ぼんやりと。考えるでもなく、ふと思い浮かんできたのは、
誰かを気に入った、という表現って、ちょっと微妙じゃないか?ということだった。

〇〇を気に入る、気に入ったって、
いつ使うんだ?

食べ物や商品、物に対してなら問題ないかも。
でも、人を気に入るって、使うかな?
こんなとき、私は職業柄、
例文が頭の中をぐるぐるする。可能なかぎり例文を取り出そうと引き出しをあっちこっち開け始めるのだ。

この場所・家・店を気に入った
さっきのパーカー、やっぱり気に入ったから買ってくるね
お気に入りの絵・場所
↑こういう場合は良い


彼を気に入った→なんとなく上から目線
君を気に入った→上から目線
お気に入りの上司→これはないかも
お気に入りの部下→ありえる。上司から見て部下だから、やっぱり上からって感じ

彼(あなた)のやり方が気に入りました
彼(あなた)のやり方が気に入らない

第三者同士が「彼」のいない場所で話す「気に入る・気に入らない」は良い、
「あなた」が目の前にいるときに「気に入る・気に入らない」は基本的に言わないかも。

うーむ。


言葉の感覚は、人それぞれ。私の感覚と異なる人もいらっしゃることでしょう。
お読みくださりありがとうございます。

初出:2021年12月20日 


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