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[ネタバレあり]ハリスおばさん、パリへ行く

読む(本のことなど)
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先日、映画『ミセス・ハリス、パリへ行く』を観た話を書きました。

ようやく、原作(ポール・ギャリコ『ハリスおばさんパリへ行く』)を読めたので、映画との違いなどについて、書こうと思います(読んだのは翻訳本です)


結論から言います。

映画もよかったですが、小説のほうが、さらによかったです。

心温まるお話だと思います。

とりあえず映画を観て、映画の雰囲気やハリスおばさんのことが気に入ったら、小説もおすすめです。

映画と小説で異なる箇所をいくつか

  • 原作では、ドレスを捨てない。

まず、これは個人的にいちばん気になったシーンですが、映画の最後のほうで、ハリスおばさんが大事なドレスを川に投げてしまうのです。

え〜!もったいない!

と思いました。だって、ディオールのドレスですもの。

焼け焦げて着られなくなってしまったドレスとはいえ、布は当然、最高級の素材でしょうし、ディオールで働く人たちやお針子さんたちの愛?が詰まっているドレスです。ハリスおばさんのために、みんなで頑張って、急いで仕上げたドレスですもの。

飾りに付いている宝石だってあったでしょうに。

いくらでも、修理や再利用はできそうなのに、なぜ川に捨てちゃう?

それに、川の汚染が・・・

とか、気になってしまいました。

そういえば、映画の最初のほうで、おばさんはほかにも、川に何か大事なものを捨てていましたね。(指輪だったかな)

水で浄化する、というスピリチュアル的な発想でしょうか・・・。なぜ捨ててしまうのか、もったいないおばさんの私には、なんだかなぁという気分が拭えませんでした。

しかし、原作の小説には、そのような場面は出てきません。おばさんは、川になにも捨てません。

だから、私と同じような気持ちで映画を観た人がいるとしたら、安心してください^^。

パリで出会った人々の愛と、思い出の詰まったドレスを、おばさんは引き続き大事にするのです。

そして。

  • 原作では、代わりのドレスは届かない。

完全にネタバレになりますが、映画の最後には、おばさんの顧客である女優の卵が、ドレスを焦がしてしまい、それが新聞に載って、ディオールの売れ行きがよくなったので、おばさんが一番最初に欲しがっていたドレスがディオールから届く、というシーンがありました。

原作には、そのエピソードはありません。

原作では、おばさんは、一番欲しいドレスを買って帰るのです。だから、代わりのドレスはないのです。

  • おばさんは仮縫いに遅刻しない。

映画では、シャサニュ侯爵とお酒を飲んだハリスおばさんが、翌日の仮縫いの時間に遅れてしまう、というシーンがありました。原作では、お花の市場で話し込んでいたお二人ですが、遅れそうになると思ったおばさんが話を切り上げ、ちゃんと仮縫いに向かいます。

・マダム・コルベールはすぐにおばさんが好きになる。

映画では、いちばんあとまでおばさんのドレスをつくることに難色を示していたコルベールですが、原作では、おばさんがいちばん最初に出会うディオールの人であり、おばさんの魅力にすぐに気づくことになります。ショーでも、おばさんがよく観られるように、席を用意してあげています。

・ナターシャは、サルトルを読んでいない。

おそらく、ナターシャがほかのモデルとは違うという点をクローズアップするために、映画ではわかりやすく、哲学の本を読む女性として描いたのかもしれません。原作では、ナターシャが本を読む女性というシーンはなく、ただ、看板モデルとしての仕事になんの興味もなく、故郷でそうしていたように、平凡で穏やかな暮らしをして、家庭を持ち、子どもをたくさん育てたいと願う女性として描かれています。

アンドレとナターシャの心のかよわせ方が、小説ではもっとくわしく描かれていて、読んでいるとキュンとするかも?です。おばさんがキューピッド的な立場となるのですが、おばさんは最初から、アンドレがナターシャのことが好きだと見抜いています。

・おばさんは料理を作らない。

これは、映画の中で、おばさんがアンドレのアパルトマンを掃除し、その後、みんなでちゃちゃっとご飯を食べるとき、おばさんが料理を作るのですが、原作では、アンドレが食事を買ってきてくれます。そして、パリのいくつかのレストランで、おばさんとアンドレとナターシャの3人で食事をする場面もあり、おばさんは今までに味わったことのない、さまざまな料理に舌鼓を打つのです。

私もパリの素敵なレストランに行ってみたいわ〜。

・おばさんは、恋をしない(ここ大事^^)

映画では、おばさんはサシャニュ侯爵といい感じの仲になるのかなぁ(なりそうでならない)という場面が出てきますが、原作では、おばさんは恋をしません笑

次の作品『ハリスおばさん、ニューヨークへ行く』を読むと、サシャニュ侯爵の運転手がおばさんに好意を持ち、最後のほうではロンドンの部屋の鍵を渡す場面があり、今後の展開はいかに?と読者の想像を膨らませて終わります。

・おばさんは、ディオールで針仕事をしない。

映画では、おばさんがディオールのメゾンでお裁縫の腕を褒められるといった、ちょっとした場面がありますね。原作では、そのような場面はありません。

・最後にディオールから贈られてくるのは、ドレスではなく・・・

もっと愛を感じられるものが贈られてきます。個人的には、豪華な代わりのドレスが贈られてくるよりも、ずっと良い終わり方だったなと思いました。この最後のメッセージに、原作者ポール・ギャリコの想いが詰まっているようにも思います。この終わり方が、映画とはだいぶ違っています。(映画だと、視覚的に映えるほうが重要なので、あれはあれで素敵なのですが、小説には、小説にしか描けない味わいがあるのだなぁと感じました。)

原作と映画は、他にもいくつか違う点がありましたが、ぜひ映画も観て、本も読んでほしいので、このへんにしておきます^^;;

私が読んだのは、少し古いバージョン(復刊ドットコム)の『ハリスおばさんパリへ行く』です。


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